初恋は叶わない
夕方、リビングでドラマの再放送を見てたのに、

あれ?いつのまにかたたみかけの洗濯物に埋もれて、

寝てしまっていた。

こんなの、まるでどっかの主婦じゃん。

自分の暇さを実感してぞっとする。

うたた寝したせいで、体がじっとりと汗ばんで気持ちが悪いので、

シャワーを浴びようとバスルームへ向かうと、

ん?誰かいる?

お姉ちゃん部活から帰って来たんだ?


「かりん、今日家庭教師の日でしょー?」

「そーだよ」


なにか言いたそうにニヤニヤして、私の顔を見るお姉ちゃん。


「まぁ、昔からあんたは修一のファンだもんね。

私にはどこがいいのか、全っ然、わかんないけど」


昔からお姉ちゃんは、修ちゃんのことを修一と呼ぶ。

二人は同い年だから仕方ないけど、

私はなんか気に入らない。

床に置いた体脂肪計に足を乗せ、


「でも、修一は年上が好みだからなぁ・・・」


また一人でクスクス笑って、とにかく感じ悪い。

無視して側を通り過ぎようとすると、


「この前、私、部活の帰りに見ちゃったんだよねぇ」


含みのある言い回しに、思わず足が止まった。

ここで立ち止まったら向こうの思うツボなのに、

その続きを聞きたい誘惑には勝てなくて。


「近所のファミレスでなんだけど、アイツ、彼女と揉めてたみたいでさ、

すっごいキレイな感じの人で、あれ年上だよ絶対。

その人、泣いてたんだよ!ヒドくない?あれもうダメっぽいよ、絶対」


ワイドショーのレポーターみたく、嬉しそうに話すお姉ちゃんは、

超ヤな感じだったけど、ウソをついているようには見えなくて。


「それって、いつ・・・、」


言いかけて、自分の言葉にはっとした。

そんなこと聞いたってどうしようもないのに、何を言ってるの、私。

黙り込んでうつむく私を、お姉ちゃんが不思議そうな顔で覗き込んでくる。
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