初恋は叶わない
「電話だよ?」

「そうみたいだな」

「だな、じゃなくて!出ないの?」

「どうしよっか?」


そんなこと、私に聞いたって知らないし。

答えないでいると、


「じゃ、出ない」


そう言って、まさか電源を切ろうとするなんて!

「ちょっ、切っちゃダメでしょ!」


慌ててケータイを取り上げようとしたら、

修ちゃんはその手をどんどん高く上げていく。

取れるもんなら取ってみろって顔して。

もう、頭に来た!

子供じゃないんだからね!


「早くしないと切れちゃうじゃん!」


本気出して掴みかかって、

なんとか指先が携帯に触れたと思ったら、


あれ?


音が止まった。


「あーあ、切れた」


って、舌だしてる場合じゃないでしょうが。

すると、今度は床を伝わって、

違うリズムの振動音が響く。

私のだ…。


「鳴ってるぞ?」

「わかってます」


むすっとしてケータイへ伸ばした手首を、

修ちゃんに掴まれる。


「え?」

「お勉強中は、切っとくのがマナーだろ?」


はあぁぁぁ?

意味わかんないんだけど?

自分のだって鳴ってたよね?

何で私だけ怒られるの?


「お前だけ出るの、ずるいだろ?」


その理屈、全然わかんないです。

必死に手を伸ばす私を嘲笑うように、

修ちゃんの手が携帯を拾い上げる。



「へぇ、『早川』だって」


ヒトのを勝手に見てんじゃないわよ!

しかも、よりによって、早川って!?

なんて間の悪い。
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