初恋は叶わない
「どーする?出たい?」


何これ、何の罰ゲームですか?

奪い取ろうとジャンプしても、

修ちゃんの頭の上で光るケータイには届かない。


「このぉ!いい加減に…しろっ!」


チビだからって、バカにして!

頭にきたから、助走つけて、

思い切りとびかかってやる!


「おい、危なっ、うわっ」

「きゃぁっ」


私の体あたりをまともにくらって、

修ちゃんはそのまま床に倒れ込んだ。


「いったー!オマエなぁ、
もうちょいで落とすとこだぞ」


呆れ顔の修ちゃんが、

私のケータイを大事そうに抱きかかえている。


「だって!」

「しかも重い!」

「え…」


言われて初めて、

自分のしてるとんでもない格好に気づき、

血の気が引いていく。

どうしよう、この格好、

馬乗りになってるみたいで、

かなり恥ずかしい。

スカートじゃなかったのが、

せめてもの救いだけど。


「いつまで乗っかってるつもりだよ?」

「うわっ、ごめん、すぐ退くからっ」


一人、慌てふためいてると、

床に寝そべった修ちゃんがくすくす笑ってる。


「お前って、ホント、男に免疫なさすぎて…」


言いながら、私の二の腕を掴んで起き上がった。

そのままスローモーションのように、

額と額がコツンとぶつかる。


「心配だよ、お兄ちゃんは」


そうつぶやいた優しい声に、

あれ、痛い。

胸の奥がギューってなる。

わけもわからないのに、

涙がぶわっと溢れてきそうな感覚に襲われた。
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