初恋は叶わない
「昔はフツーに呼んでたよなぁ?

それがいつのまにかさぁ。

ま、反抗期だから仕方ないか…」


「そんなのとっくに終わってます!」


「あ!…そういえばさぁ、

『お兄ちゃんのお嫁さんになるー!』とか言ってなかったっけ?」


「言ってないから!」



強く言い返すけど、修ちゃんは何も言わずに、

ただニヤニヤ笑ってる。

こんなに近いと、誤魔化しきれないから困る。

動揺してるのバレたくないのに!

だって、だんだん、

色々思い出してきちゃったんだもん。


確か、お姉ちゃんが言ったんだ。


「『お兄ちゃん』とは結婚できないんだよ」って。


自分より修ちゃんに懐いてた私に、

イジワルで言っただけなんだろうけど。

『お嫁さん』になりたかった幼い私は、

『お兄ちゃん』って呼ぶのやめる決心をして。

そこまで思い出して、一人赤面する。

だって『お嫁さん』って!

完全に忘れてたけど、

そんなこと考えてたんだ私。

子供って恐ろしいな。


頭を抱えているところに、

「ヴィーッ、ヴィーッ」

放りっぱなしになってた修ちゃんのケータイが、

また音をたてた。
< 67 / 159 >

この作品をシェア

pagetop