初恋は叶わない
気づかれてたか…。

それでもフツーそういうこと聞くかな?

せっかく忘れかけてたのに、そこは見て見ぬ振りすべきトコなんじゃないの?


本人も多少気を使ってか、全然こっちを見てこない。

「さっき、修一さん出て行くの見たんだ。
なんかすっげぇ急いでたみたいだったけど、なんかあった?」

答えられずに俯く私に、



「ゴメン!今のナシ、やっぱ帰るわ。」



拝むように顔の前で両手を合わせて謝る。

そんなことするくらいなら最初から聞かなきゃいいじゃん、もう!



「レイナさんから電話あったみたいでさ、
修ちゃんってば、すっごい勢いで出てったよ。
なにもあんなに急がなくってもさぁ…」



せめて笑い話にしてしまえたらと、

終わりかけた話をあえて蒸し返したりして。

できるだけフツーに、

なんてことない顔して話しているつもりなんだけど…、どうなんだろ?

早川が心配してくれてるの、わからないわけじゃない。

ただ、何が悲しくて泣いていたのか、自分でもはっきりしないのに、

腫物に触るようにされても困るから…。

早川は、余計なこと言って、後悔しているような顔をしてる。

まあ、こういう時って誰でも、かける言葉が見つからないよね。
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