初恋は叶わない
ムカついて思わず振り上げた手を、

ギュッと握りしめていると、



「よし、こい!」



って両手を合わせてパンと叩く早川。



「?」



かかってこいと人差し指の先をくいくいと曲げる。

さっきとはまるで別人みたいなキラキラした目。

腰を落として身構えてるけど、一体何のポーズ?

…ひょっとして、ボクシング?

理解するのに数十秒はかかった。

だいたい、突然そんなこと言われても、

はぁ?って感じなんだけど。

何とも体育会系なその発想が笑える。

まあせっかくだし、ノってあげなきゃ悪い気がしてきた。

一応ボクシングぽく左右交互にパンチを繰り出しながら、

「こ、こんな感じ?」

あんまりこんなのやったことないから不安で聞かずにはいられず。

そっとチラ見すると、

めっちゃ楽しそうなんだけど。



「全っ然ダメ。腰が入ってない、腰が。」


「ちょっとは運動しろよ。体力ないヤツは遊んでやんねぇぞ!」



容赦ない檄が飛んでくる。


優しさとか、いたわりとか、そういうの一切なしのヤツ。


だいたい、別に遊んでなんて言ってないから!
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