儚い瞳の守り人
「そういえばどうですか、特別人警察本部は。2年も経てば立ち位置も変わったりしません?」
期待はせずに聞いた。この様子だと何も変化はないだろう。
「相変わらずだ。上層部のことはからっきし。ただ悪い気配はする」
「必ず、何か起こるぞ」
眉間にシワを深く刻み込んだ。
「……そんなことはずっと前から覚悟してますから」
『それならいい』と言わんばかりに無言になった中麻は歩き出そうとする。
「じゃあな、萊斗。引き止めて悪かったな」
「さよなら。中麻さんが敵にならないことを願ってます」
「おいおい冗談はやめろ。でもまぁ、俺もそう願ってるよ」
何も起こらなかった未来でまた会えることも……そんなことは簡単に口にしない。
口にしなくても中麻も同じことを願っているのを十分に知っている。
それでも次にこうやって会って話すときは極限の状態に追い込まれたときだろうと、俺たちは分かっているから。
違う場所で同じものを守るために。
俺は中麻に背を向けて、反対の方向へ向かって歩き出した。