儚い瞳の守り人
最新設備の揃ったジム、ここに住んでいるメンバーのための小さな個室、銭湯のような大浴場、一部の大人たちのためのデスク。
「どこからこんなお金出てくるんですか」
「さてはてなぁ」
とぼけたように目をそらす長は何となく怪しい。
「競馬とか株ならまだいいですけど、ヤミ金に手を出したりしてませんよね?」
「おいおい。俺がそんな危ないことに手を出す男に見えるか?」
長はおちゃらけたように首を傾げて肩をすくませる。
「人間、お金と欲のためなら何しでかすか分かりませんからね」
『信頼もクソもねぇなー』と笑う長は後から付け足すように『それはないな』と言った。
「そういえば最近お前どうだ、蓬お嬢ちゃんとは」
「お嬢は元気ですけど。何ですか『とは』って」
あ、駄目だ。ここで言葉尻を捉えたらまたからかいに……いつものことなのにいつも俺は長の言葉に引っかかってしまう。
平静。最大限の平静を装う。
「お前たちの関係に変化はないのかと思ってな」