儚い瞳の守り人
「久しぶりだな、お前ら」
「もう本当っすよー。たまにはお俺たちの面倒も見てくださいよぉー」
肘であらゆる方向から腹をどつかれるのは地味に痛い。
「萊斗はお嬢とのあれこれで忙しいからな」
長が余計な一言を言うと、また俺の居心地の悪い話題になった。
くそ……。
「つ、ついにくっついたんですか⁉︎」
「あと10年はかかると思ってのに、先越されたなぁ」
あちこちから口々に驚きやら祝福やら侮辱やらの言葉が聞こえてきて、苛立ちで頭に血が上った俺は大声で叫んだ。
「ちげーよ‼︎くっついても何ともなってねーわ‼︎」
笑い出した無双会のメンバーたちにため息を吐くと、俺は逃げるようにガラスの扉を開けてジムの中に入った。
入り口から近いところに置いてある懸垂マシンにぶら下がってトレーニングをしている男に近づき声をかける。
「お久しぶりです」
「おぉ、何か周りが騒がしいと思ったら萊斗じゃん。お久しぶり」
無双会の数少ない大人組でありNo.2の飯月(イイヅキ)は懸垂をしながらでも、笑顔を絶やさない。