儚い瞳の守り人
「言っちゃ駄目だったかな」
「別に口止めされてた訳じゃないしいいだろ」
「まぁ確かにそうだよね」
そう言うと飯月はその場に胡座をかいて、茶色に染めたいつも少しふわりと浮いている髪の毛を、タオルでぐしゃぐしゃと拭き始めた。
雨宮は耳についた赤いピアスを片手で弄りながら、もう片方の手で軽々と懸垂している。
その2人の姿は男の俺から見てもかっこいい。
彼らに親がいないというのは何度か聞いたことがあった。
同じ孤児院で育ち、高校に入って荒れて非行に走っていた2人をこれ以上悪い方向へ進まないよう長が繋ぎ止めたという話も。
そこから長は無双会を作った。
今の穏やかな2人からは考えにくい過去だ。
長に拾われたっていう面では俺も同じ。
長に出会って何かが変わったというのも、多分同じだと思う。
「じゃあ俺そろそろ帰ります」
「えー萊斗もう帰るの?手合わせしてよ」
駄々をこねるように、飯月は俺を下からじっと見上げた。