儚い瞳の守り人
「……ありがとう」
「いえいえ」
さっきお嬢と仲よさげに話していた男の仮面を被ったような微動だにしない笑顔を見て、俺の脳内にある危険を知らせるブザーが大きく鳴り響くように危機感を覚えた。
何なんだ、あいつ。
その笑顔に恐怖心すら覚える。
ゆっくりとお嬢が俺の方へと近付いて来るのを見守る、というよりは監視するように目を光らせそして、俺の方に視線を向けると妖しく笑ったような気がした。
お嬢に向き合って小声で話す。
「何であいつと関わったんだ。俺はいつも近付くやつには気を付けろって」
「でもあの人悪い人ではないみたいだよ?話してて何となく思った。それに依ちゃんもこの学校は」
「国が管理してるから危険人物が入る術がない、だろ?」
「うん」
「はぁ……」
依澤も飛んだ真似してくれたな。
大袈裟にため息を吐くと、お嬢は俺の表情を窺いながら不思議そうな顔で俺をジロジロと見てくる。
お嬢は本当に自覚がない。