儚い瞳の守り人
温かい人
萊に連れられて、わたしたちが来たのは、階ごとに種類の違う会社が入っていて、掃除が隅々まで行き届いているような綺麗で新しいビル。
あの後ずっと逃げたわたしたちを追う警察の気配は感じなかった。
多分追ってこなかったのは、街でわたしたちに関しての大きな騒ぎを起こしたくないからだと思う。
わたしたちが警察に追われていたら、わたしたちは何者なのかと世間一般の人の興味を引いて、龍人とバレる可能性があるから…じゃないかな。
龍人という存在が世間一般の人に知れ渡るのは、わたしたち龍人だけでなく、龍人を研究したい人にとってもライバルが増えて不都合なことだから。
そうならなくても、萊の怪我は十分に周囲の興味を引いていたけど。
……でもそんなことを気にするよりもまず、萊の手当てを一刻も早くしなきゃいけない。
萊は破れた制服の裾を無理矢理千切って、走りながら片手で何とか包帯代わりにして巻いていた。
でも、そんなの気休め。
本当は病院に行くべきなんだろうけど、取り敢えず身の安全が保障できる所に行った方が良いって萊は考えたんだろうな…。