人魚姫
人魚姫
好きな人がいた。
どんなに願っても叶わない恋。
そう、あの人には……。
『美姫』
彼女がいた。
いや、彼にはっきりと確かめたわけじゃないけれど。
ただ、何となくそんな気がしていた。
美しい姫、名は体を表すとはよく言ったものだ。金に近い色まで脱色した彼女のその髪は緩い癖を帯びて、まるでフランス人形のようだった。
自分はと言えば憂い姫と書いて憂姫。漆黒の髪を腰まで伸ばした一松人形。誰かを呪い殺す力じゃなくて、夢を叶える力が欲しかったのに、って言ったって人形じやないし誰かを呪い殺すことすら出来ないけれど。