恋風吹く春、朔月に眠る君
▼▼▼
昔から毎日のように一緒に遊んでいた朔良と双子の姉の楓は人より芸術の才能があった。
ピアノと言えば朔良で、絵と言えば楓と称されるほどに家族の中だけでなく、何時の間にか学校でも二人は有名だった。
そんな芸術に傾倒する二人に囲まれて育ったけれど、私にはピアノも絵も到底才能があるとは言えなかった。
朔良のように滑らかに指が鍵盤の上で踊ることはないし、楓のように綺麗な絵は描けないどころかネコを描いたはずなのにネコだと認識してもらえない。
そんな私は昔から身体を動かすのがすごく好きだ。小学生の時は暇さえあれば外で遊んでた。
結果的に怪我ばかりして、お母さんには『元気なのは良いけど、もうちょっとお淑やかにしなさい』と何度言われたことか。
今は小学生の時のように遊ぶことが生きがいみたいな生活は送ってないけど、それでも中学から始めたバドミントンは好きで今でも続けてる。やっぱり、身体を動かすのは楽しい。
「一旦休憩だー! しっかり水分補給するように!」
顧問の大きな声が体育館に響く。それに対して部員が『はい!』と同じように大きな声で返事をするのは体育会系の部活ならお決まりだと思う。
みんながカバンの辺りに集まって、流した汗をタオルで拭いて、それを補うように水分補給する。でも、私にはカバンの中にある筈のものがない。
「あれっ、双葉水筒持ってきてないの?」
「うん、忘れちゃったみたいで。ちょっと自販機行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
財布片手に一人、体育館を抜け出す。水筒を忘れるなんて最悪だ。溜息を吐きながら自販機へと向かった。
お茶にオレンジジュース、炭酸、スポーツドリンクと並ぶ中で、迷わずお茶のボタンを押す。ガタンッという音がして、ペットボトルを手にした時、耳慣れない声が聞こえた。
「今日もお友達が来ているのですね」
鈴を鳴らすような高く柔らかで甘い響きを持つ声。私はこの声を知らない。驚いてばっと後ろを振り向くと、昨日桜の木の下にいた女の子が目の前にいた。
「な、んで........」
昔から毎日のように一緒に遊んでいた朔良と双子の姉の楓は人より芸術の才能があった。
ピアノと言えば朔良で、絵と言えば楓と称されるほどに家族の中だけでなく、何時の間にか学校でも二人は有名だった。
そんな芸術に傾倒する二人に囲まれて育ったけれど、私にはピアノも絵も到底才能があるとは言えなかった。
朔良のように滑らかに指が鍵盤の上で踊ることはないし、楓のように綺麗な絵は描けないどころかネコを描いたはずなのにネコだと認識してもらえない。
そんな私は昔から身体を動かすのがすごく好きだ。小学生の時は暇さえあれば外で遊んでた。
結果的に怪我ばかりして、お母さんには『元気なのは良いけど、もうちょっとお淑やかにしなさい』と何度言われたことか。
今は小学生の時のように遊ぶことが生きがいみたいな生活は送ってないけど、それでも中学から始めたバドミントンは好きで今でも続けてる。やっぱり、身体を動かすのは楽しい。
「一旦休憩だー! しっかり水分補給するように!」
顧問の大きな声が体育館に響く。それに対して部員が『はい!』と同じように大きな声で返事をするのは体育会系の部活ならお決まりだと思う。
みんながカバンの辺りに集まって、流した汗をタオルで拭いて、それを補うように水分補給する。でも、私にはカバンの中にある筈のものがない。
「あれっ、双葉水筒持ってきてないの?」
「うん、忘れちゃったみたいで。ちょっと自販機行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
財布片手に一人、体育館を抜け出す。水筒を忘れるなんて最悪だ。溜息を吐きながら自販機へと向かった。
お茶にオレンジジュース、炭酸、スポーツドリンクと並ぶ中で、迷わずお茶のボタンを押す。ガタンッという音がして、ペットボトルを手にした時、耳慣れない声が聞こえた。
「今日もお友達が来ているのですね」
鈴を鳴らすような高く柔らかで甘い響きを持つ声。私はこの声を知らない。驚いてばっと後ろを振り向くと、昨日桜の木の下にいた女の子が目の前にいた。
「な、んで........」