わたしの意地悪な弟
「本当、いい加減にしてほしいよ」

 行き先のないぼやきを紡ぎ出し、髪の毛をかきあげる。

 わたしはお茶を買うと、教室に戻る。

 席に座ると、短くため息をついた。

「遅かったね。まさか、絡まれた?」

 利香は眉根を寄せ、わたしを見る。

「少しね。でも、大丈夫だよ」

「嫌だね。ついていけばよかった」

「気にしないで。ありがとう」

 そう言いながらも、あの彼女から樹に弟宣言をさせられた時の後味の悪さが、わたしの体の中を駆け巡り、胃のあたりを刺激していた。

 何でこんなに気分が悪いんだろう。

 体調でも悪いのだろうか。

「顔色悪いけど、大丈夫?」

「大丈夫」

 わたしはお茶を飲み、そのむかつきをおさめようとした。

 だが、食事を終え、授業開始前になっても、その違和感は落ち着かず、胸の奥がざわついている。

「顔色悪いよ。保健室で眠ったら?」

「そうしようかな」

 少し眠ればこの胸のむかむかもすっきりするだろうと思ったのだ。
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