わたしの意地悪な弟
 つい最近まではそうでもなかったと言いかけて、口を噤む。

 学校の先生にそこまで言う必要はないと思ったためだ。

 わたしはあいまいに微笑むと、再び布団に身を鎮めた。

 樹はわたしのことを心配してくれたんだろうか。

 樹にとってわたしはどんな存在なんだろう。

 姉と思ってくれているんだろうか。

 今みたいな関係を続けていきたいと思う一方で、わたしは今後のことを気にしていた。

 樹に彼女ができたら気になるし、ああいうことを言ってくる子なら正直嫌だ。

 わたしに対するような態度をあの子にとったら、嫉妬してしまうかもしれない。

 これだと樹の流した冗談が本気になってしまう。

 今日の昼休み、ジュースを買いに行ったことを心から後悔していた。

 わたしは授業の終了を待ち、教室に戻ることにした。

 残りはホームルームだけなので、それくらいなら大丈夫だと思ったためだ。

「大丈夫? 言ってくれれば迎えに行ったのに」

「ごめん。携帯を持ってなかったし、大丈夫だったよ」

「無理しないでね」

 わたしは友人の言葉に頷く。
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