わたしの意地悪な弟

 彼女は別に花火が好きな子というわけではない。

その彼女が花火大会に行きたがる理由は一週間ほど前にお母さんから浴衣を買ってもらったため、着る機会がほしいのだろう。わたしも一緒にと買ってもらっている。

 花火が好きなわけではないというのは、樹も同じだろう。

 日和の話を聞き、短くため息をついた。

「面倒だから行かない」

「どうして? お姉ちゃんと二人きりにしてあげるから行こうよ」

 何でこう日和は微妙なことを言うんだろう。

 もう一度、樹は面倒そうにため息を吐く。

 彼がこう来るのは今までの経験上分かっているはずなのに、わたしには日和の考えが良く分からない。

「お前はどうするんだよ」

「適当ぶらぶらしてもいいし、誰かわたしの友達を誘ってもいいんじゃないかな。誘うなら、小梅だから問題ないでしょう?」

 小梅ちゃんは越谷小梅といい、日和と小学生時代からの友人で、日和と同じ高校に通っている。

当然、樹とも中学までは一緒だった。日和が最も親しくしている友人だ。

「越谷と二人で行けば?」

「樹がどうしてもお姉ちゃんと二人きりで行きたいならそうするけど」
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