わたしの意地悪な弟
 彼女はどうしてもというのを強調し、樹が不機嫌そうにため息を吐く。

「そんなこと言ってない。だいたい、何でそんなところに行きたがるんだよ」

「わたしとお姉ちゃん、この前浴衣を買ってもらったの。お姉ちゃんの浴衣、ピンクでかわいいんだよ。樹もお姉ちゃんの浴衣姿見たいよね」

 樹は興味がなさそうに、そうと短く返した。

「決まりだね。花火大会の日、開けておいてね」

 彼女は強引に話を打ち止めると、階段をあがっていく。

 絶対樹はノーだと言っていたはずなのに。

 樹は面倒そうに短くため息を吐いた。

「嫌なら断ろうか?」

「あいつにそんなことをしても無駄だと分かっているよ。あの押しの強さは大物になりそうだよ」

 樹もなかなかだが、似たタイプだからこそ抵抗を感じるのだろうか。

 わたしも同じように押しが強く振舞おうか考えてみたが、やっぱり無理だと判断した。

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