わたしの意地悪な弟
 英語のテキストを捲っていると、わたしの机に影かかかる。

亜子が目を輝かせてわたしのところまでやってきたのだ。彼女は利香の肩をつかみ、利香を振り向かせた。

「花火大会に一緒に行かない?」

 そう言われたのは、日和から花火大会に誘われた翌日だ。

「岡部君と一緒に行きたいから、とりあえず人を集めているみたい」

 利香はそう肩をすくめる。

 亜子と岡部君はあれ以来仲がいい。付き合うとまではいかないが、二人でよく一緒にいるのを見るし、岡部君もまんざらではないと思う。

「二人で行こうと誘ったら来てくれると思うけど」

「そんなの告白と同義じゃない。無理だよ」

 亜子は顔を真っ赤にして否定する。

 彼女が頑張っているのは分かるし、協力したいとは思うが、わたしには大きな問題があったのだ。日和と約束してしまったのだ。

身内だからといって友人との約束を優先するようなことはしたくない。それに、亜子なら素直に理由を言っても分かってくれるだろう。
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