わたしの意地悪な弟
 樹が苦言を呈するが、日和がそんなことを聞くわけもない。

「大丈夫だって。樹のことは分かっているもの」

 日和の得意気な笑みに樹は黙り込んだ。

 日和はわたしの手を引き、部屋へと導く。

 そして、日和に言われたとおりピンクの花がプリントされた浴衣を渡すと、彼女の手を借りながら、袖を通す。

 帯を結び終わると、日和の手がわたしの髪に触れる。

 彼女は髪の毛を複数に分けて三つ編みすると、それを頭部に巻き付けていく。

 あっという間にわたしの肩の下まである髪の毛が、一つにまとまる。

 彼女は着物と一緒に買った花の髪飾りをつけると、鏡越しにわたしの姿を見て、満足そうに微笑んだ。

「器用だね。日和は着方をしっていたの?」

「お母さんに昨日、教えてもらった」

 昨日の今日で、一人でこなせる彼女の出来のよさには溜息が漏れるばかりだ。

「やっぱりお姉ちゃんによく似合っているね。可愛い」

「可愛いって」

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