わたしの意地悪な弟
 可愛いかはともかく、メイクをしているわけでもないのに、いつもと雰囲気がガラッと変わる。でも、本当にそれだけだ。

「早く樹に見せてあげようよ。きっと喜ぶよ」

「そんなことないよ」

「照れなくて大丈夫だよ」

 彼女はわたしの反論に聞く耳を持たずに、リビングへと連れて行く。

 日和が扉を開けてリビングの中にわたしを連れ込んだ。そして、本を読んでいた樹と目が合う。

 日和はわたしの肩に手を載せて、自分より前に着きだした。

「お姉ちゃん、似合っているよね」

 だが、樹は目をそらし無反応だ。無反応は少し間違っていて、彼は短くため息を吐く。

 こんなくだらないことに巻き込まないでくれとでも言いたそうだ。

 きっとわたしの格好なんてどうでもいいと思っているんだろう。

「じゃ、行こうか。樹も早く来なさい」

 日和はリビングの扉に歩きかけながら、樹を呼び寄せる。

 だが、樹はソファからぴくりとも動かない。
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