わたしの意地悪な弟
「行かない」

「折角浴衣を着たのにもったいない。じゃあ、二人で行こうか」

「行くなら着替えて行けよ。そんな恰好で行くな」

 樹はそう冷たく言い放つ。

 それを見て、日和は何か察したのか、口元を歪めた。

「お姉ちゃんを他の人に見られたくないんだ。可愛いもんね。ナンパとかされたらどうしようかな。お姉ちゃん人がいいから口車に乗せられて、連れていかれたりしてね」

 にやにやと笑う日和に、樹は不機嫌を露わにする。

「お前が断ればいいだろう。口が回るし、お前がいたら大丈夫だよ」

「そっかな。わたしは一応女の子だし、力も樹に比べると弱いもの。樹がいればナンパしてくる人はいないだろうし、お姉ちゃんも男の人がいたほうが安心できるよね」

「そうだけど、嫌なら無理に連れて行かなくてもいいんじゃないかな」

 わたしは一応、樹のフォローをするが日和は聞く耳を持たない。

「お姉ちゃんが靴擦れして、痛い思いをしても平気なの?」
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