わたしの意地悪な弟
 母親は洗濯物を畳んでくれる時もあれば、こうやって部屋に置いて立ち去ることも少なくない。

樹もそんな母のアバウトな部分を知っているはずだ。だが、彼はわたしをからかうネタだと思ったのか、挑発してくる。

 もっとも帰ってから食事までの数時間の間に片づけをしなかったという意味では樹の言うこと当たっているのだが。

「余計なお世話です」

「俺が片づけてあげようか?」

「自分でするから、バイバイ」

 わたしは樹の背中を押すと、部屋から追い出した。

 そして、安堵のため息を吐いた。

 本当に勘に触る言い方をする。

 今の樹は好きではない。それは本当だ。

 わたしは幼い頃の彼が、妹の友人として好きではあったんだと思う。

母親の再婚を受け入れられた要因の一つに、彼と一緒に暮らせることへの喜びがあったことはわたし自身も認めていたのだ。

だが、彼の態度は極めて一貫性がなかった。

 彼はわたしのことが嫌いなくせにことあるごとに食って掛かってくる。

 わたしは洗濯物に触れると、短く息を吐いた。
< 12 / 287 >

この作品をシェア

pagetop