わたしの意地悪な弟
 翌日、目を覚ますと体を起こした。

 昨日は樹が部屋に戻ったのを見計らい、寝支度を整えたが、今日もそうするわけにはいかないだろう。勇気を出してリビングに行く。

そこには母親の姿だけがあった。

 樹は朝食を食べ終わったのか、彼の食器はない。

 わたしは拍子抜けして、部屋に戻ると、溜息を吐いた。

 キスは恋人同士であれば、普通にすることだ。

 わたしと樹は兄弟でもちろん恋人ではない。もちろん、血はつながっていないが。

 樹のことだ。キスをしてみたかっただけ、わたしの反応を見てからかいたかっただけと言われる可能性だってある。

そう言い聞かせながらも、樹はわたしを好きなんじゃないかという、周りの人に聞かれたら笑われそうな考えが脳裏を過ぎり、頭を抱え込んだ。

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