わたしの意地悪な弟
 昼食だと母親に言われ、今日だけでしわが倍以上になったのではないかという頭を抱え部屋の外に出る。

その時、樹とばったり顔を合わせる。

 わたしは昨日のキスのことを思いだし、顔がほてる。

 樹はわたしを冷めた目付きで一瞥すると、わたしの脇を通り過ぎた。

 照れやからかいの感情を感じ取ったのなら、それはそれだと割り切れただろう。

だが、樹はいつもの何事もなかったような表情を浮かべている。

彼にとってはあの程度はどうってことないということなんだろうか。

 今まで樹に彼女がいたり、彼女がいないのに遊んでいるということもきいたことがない。

女に慣れているわけでもないと思う。

 わたしには樹の考えが全く分からなかった。そして、考えるのがバカらしいという結論に達したのだ。
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