わたしの意地悪な弟
 わたしには分からなかった。

 樹とキスをしてから、自分の気持ちがどうなのかはっきりわからない。

 ただ、少なくとも嫌ではなかったという記憶がただされるがままになっていた。

 どれくらい時が流れたのかは分からない。

 長かったような気もするし、逆に一瞬だったような気もする。

 樹の顔が近づいてきて、そのままわたしの額にキスをしてきた。

 彼の唇が、わたしの額にキスの感触を残したまま離れていく。

 樹の手がわたしの頬から離れ頭に伸びてきた。そして、手のひらでわたしの頭を撫でる。

「何?」

 わたしは思わず額に手を当て後退する。

「なんとなく」

 樹は頬を赤らめ、どことなく幸せそうだ。

 額だったけど、樹とした二度目のキスだ。

 それとも花火大会の日を二回とカウントして三度目のキスになるんだろうか。

 樹はわたしのことをどう思っているんだろうか。

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