わたしの意地悪な弟
 樹はどんな意図をもって、わたしにキスをしてきたのだろう。

 彼はノートに視線を戻すと、問題を解き始めた。

 わたしはそんな樹を見ながら、深呼吸する。

 さっきの甘い表情はもう微塵もない。

 彼がなぜそんなことを言い出したのか、どうしてキスをするのか。


 樹がわたしを好きなのだろうかという可能性が心を過ぎりながらも、彼がそれ以上の言葉を口にしてくれることはなかった。
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