わたしの意地悪な弟
わたしに好きになられた弟
 二学期が始まった。二学期は体育祭に、文化祭など行事が目白押しだ。

 そんな学校行事を楽しむ気分にはいまいちなれなかった。

 あれからキスをしたりはしなかったが、樹は何かとわたしの部屋に入り浸るようになった。

 二学期に入るとわたしも樹も学校が始まってから、二人で一緒に過ごす時間がめっきりと減った。そんな当たり前の変化を心から残念がっていた。

 一学期までとは違う気持ちがわたしの中をみたしつつあった。

「信号、変わりそうだけど、どうする?」

 樹の問いかけに、慌てて信号を渡る生徒たちを遠目に見やり、「次で良いよ」と答えた。

 今日は早めに出てきたため、まだ焦るような時間ではない。

 ちょうどわたしたちが信号のところに到着したとき、その色が変わる。

 わたしは足を止め、同じく足を止めた樹を横目で見る。

 やっぱりかっこいいなと思うとともに、わたしの脳裏に夏以降幾度となく繰り返した問いかけが蘇った。

 わたしは樹を好きなのだろうか。

 その答えを導き出す前に、わたしの中に現実的な問いかけが浮かび上がる。

 好きになったらわたしと樹の関係はどうなるんだろう、と。
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