わたしの意地悪な弟
 彼はわたしの気持ちを受け止めてくれるのだろうか。それともわたしと距離を取り始めるだろうか。

 わたしは樹の気持ちを知らない。

 その後を意識する心がわたしたちの今後を懸念し、心に制御をかけてしまう。

「どうかした?」

「学校行きたくないなって思った」

 わたしはあいまいな笑みを浮かべた。

 その言葉には樹ともっと一緒にいたいという気持ちが含まれていたためだ。

「二人でさぼる?」

 冗談とも本気とも取れない言葉で、彼はそう言葉を紡ぐ。

「お父さんにばれたら大変だと思うよ」

「冗談。夏休みの間はよかったよな。ただ、俺は千波と同じ高校に行けてよかったよ。こうして一緒に登下校できるしね」

「それって」

「そのままの意味」

 告白ともとれなくもない言葉が引き金となり、わたしの頬が熱を帯びる。

 わたしはにやけそうになる頬を頬の筋肉に力を入れて必死に抑える。

「朝っぱらから変なこと言わないでよ」

「分かった。じゃあ、今度は姉さんの寝起きにでも言うよ」

「全く分かってない」

 わたしが大声でノーを突きつけると、樹は笑う。
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