わたしの意地悪な弟
樹に次の彼女ができて、その相手と結婚すると言い出したら、わたしはその相手との関係を祝福できるのだろうか。
そんなのは今のわたしには耐え難いことだ。
嬉しい気持ちと、戸惑う心が交互に襲ってきて、頭の中で生暖かい風がぐるぐるとまわっている。
わたしの横を同じ学年の生徒が通り過ぎていく。わたしは立ち止まっていたのに気付いた。
まずは自分の教室に入ろうと階段を上った時、二階の踊り場で見たことのある女生徒が立っていたのだ。同じ学年の子ではないのはすぐに分かるが、彼女が一年ではないかというのはおぼろげながら見当がついた。
なぜなら、わたしと樹の関係を聞いてきた、あの少女だったのだ。
「おはようございます。先輩」
「おはようございます」
わたしはさっきまで舞い上がっていた気持ちが消失し、一気に現実に引き戻される。背筋を伸ばして彼女を見る。
「そんなに警戒しないでくださいよ。この前、自己紹介をしていませんでしたね。わたし、田中恵美と言います」
彼女はそう愛想の良い笑みを浮かべる。
そんなのは今のわたしには耐え難いことだ。
嬉しい気持ちと、戸惑う心が交互に襲ってきて、頭の中で生暖かい風がぐるぐるとまわっている。
わたしの横を同じ学年の生徒が通り過ぎていく。わたしは立ち止まっていたのに気付いた。
まずは自分の教室に入ろうと階段を上った時、二階の踊り場で見たことのある女生徒が立っていたのだ。同じ学年の子ではないのはすぐに分かるが、彼女が一年ではないかというのはおぼろげながら見当がついた。
なぜなら、わたしと樹の関係を聞いてきた、あの少女だったのだ。
「おはようございます。先輩」
「おはようございます」
わたしはさっきまで舞い上がっていた気持ちが消失し、一気に現実に引き戻される。背筋を伸ばして彼女を見る。
「そんなに警戒しないでくださいよ。この前、自己紹介をしていませんでしたね。わたし、田中恵美と言います」
彼女はそう愛想の良い笑みを浮かべる。