わたしの意地悪な弟
 そんなふざけたことをしたり顔で言う彼を誰もとめようとしなかったのだ。

それは彼が一人でたいていのことをこなしてしまう人間だったからだろう。

 その志望校の話をした日の夜、リビングに行くとお茶を飲んでいる樹と顔を合わせた。

 彼はわたしを舐めるようにして見渡す。

「俺と同じ高校に行けるのがそんなに嬉しい?」

 彼はわたしの複雑な気持ちを悟っているだろうと嫌味を言いたくなるような、満面の笑みを浮かべた。

 ここで挑発に乗っても仕方ないと己に言い聞かせた。

「別にいいんじゃない? ただ、せっかくいい高校いけるのにもったいなくない?」

「別に。俺はどの高校に行こうが関係ない。これから先輩って呼ぼうかな」

「受かるか分からないでしょう」

「高校落ちるわけないじゃん。下手するとトップで受かって面倒そうだよね」

 彼はそういうと美しい笑みを浮かべた。

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