わたしの意地悪な弟
 どう考えも組み合わせはわたしと樹だ。恋人のようなそうでないような曖昧で、素直にうんとは頷けない。

「考えておくって返事をしたよ」

 そういうと、樹は優しい笑みを浮かべていた。

 家に入ると、まだ家に誰も帰っていなかった。わたしと樹は自分の部屋に向かう。だが、部屋に入ろうとドアに手を伸ばしたわたしの手を樹がつかむ。

「樹?」

 彼はわたしの口を押えた。

 まだ日和は帰ってきていないが、こんなところをみられたら、どう言い訳していいか分からない。

 そう理性を働かせながらも、彼の目を見た途端、わたしの思考回路がマヒしてしまっていた。

 わたしの背中がドアと衝突する。顔をあげると、樹の顔が迫っていて、わたしは目を閉じた。

 彼の唇がわたしに触れ、すぐに離れる。

だが、わたしが目を開けようとしたタイミングを打ち消すかのように、再び唇を重ねてきた。

そのあと、わたしの身体に自分の体をもたれかけてきた。
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