わたしの意地悪な弟
わたしの昼食を奪う弟
 チャイムが鳴り終わり、ため息交じりに立ち上がる。

「本当、ごめんね」

 前の席の利香が肩越しに振り返り、目があった。

「いいよ。いってらっしゃい」

 わたしは鞄を持ち、教室を出た。いつもわたしは利香と昼食を取る。

だが、思わぬ邪魔が入ったのだ。それはもちろん樹だ。

 わたしは樹に嫌われているが、そんな彼もたまに優しさをにじませることもある。

 もっともそのやさしさは結果的に勘違いだったわけだが……。

 家をでるとき、母親の託してくれた二人分のおべんとうを樹が受け取るのを見て、今日がその日なのだとぼんやりと考えていたのだ。

だが、彼はそれを学校についても手放さなかったのだ。

 弁当を要求するわたしに彼は涼しい顔で、「昼休みは裏庭で待つ」と言い放ったのだ。

 母親が作ってくれたお弁当があるのに昼食を買うわけにもいかず、自ずと樹と一緒に食べるのが半ば強制的に決定したのだ。

 階段をおりたとき、階下から声が聞こえる。
< 17 / 287 >

この作品をシェア

pagetop