わたしの意地悪な弟
「どんな子なの?」

 わたしは利香に無理を言い、その子が昼休みによく行っているという図書館まで連れて行ってもらう。

 図書館のミステリ小説が並んでいる棚で、ロングヘアの女の子と、ショートカットの子が小声で話をしながら本を見せ合っていた。

二人いたが、名前を聞かなくても誰が春菜という子かは一目でわかった。つややかな黒髪に整った目鼻立ち。小柄なのにスタイルもよく、樹と一緒にいても引けを取らないと思う。

 近寄りがたいという言葉がぴったりくる美人だ。

「あのさ」

「綺麗な子だね。樹にはもったいないくらい」

 心配そうな利香の表情に、わたしは笑顔で答えた。

 彼女も樹と目の前の子がお似合いだという気がしたのだろう。

 笑顔を浮かべながらも、心の中では言いようのない気持ちがうずき、それを誤魔化すために唇を噛んだ。
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