わたしの意地悪な弟
 放課後になってもわたしの気持ちは収まらなかった。

 靴箱に行くと、樹が鞄を手に立っていた。

 彼の傍には友人なのか、女の子が数人いる。

 樹の視線がわたしを捕えるが、わたしはそのまま靴箱まで行く。

 そして、靴を履きかえた。

 その間、樹は自分を取り囲んでいた彼女たちに別れを告げ、昇降口のガラス戸のところまで歩いていく。わたしが上靴を靴箱に片づけて、ガラス戸のところにいくとさっさと歩きだした。

 わたしは慌てて樹の後を追う。その間、十メートルほど走るのと変わらないほど早歩きをする。

 彼はわたしが追い付いたのに気づいたのか、わたしの姿を目で追うが何もいうこともなく同じぺ―スで歩き出す。

二学期の初めどころか、一学期に何かとわたしにかまってきていた彼とは別人のようだ。

 わたしは夕焼けに染まる彼を見て、足を止める。

 もう彼と一緒に登下校をしないほうがいいのかもしれない。
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