わたしの意地悪な弟
 お母さんは困ったように微笑んだ。

 樹は気まずそうに眼をそらす。

「高校生だし、あなたたちの関係が今のまま続くか分からない。だから、見て見ぬふりをしようとも考えたけど、こんな写真があるなら、そうもできなくて。

高校に入ったから何度も喧嘩していたみたいだし、一度話を聞いておきたかったの。本気なら、反対はしないわ。そもそも人の気持ちを強制なんてできないでしょう?

ただ、親として言うなら、付き合うなら本気で今後のことを考えてほしいの。

二人が別れて、生涯ギスギスするのは見たくないから。二人ともわたしの大事な子供なのだから、何かあってもどっちの味方もしてあげられないと思う」


 そういうとお母さんは微笑んだ。

 ここ最近、恋人同士になったわたしたちが喧嘩していたと思っていたのだろう。

 実際は二人ですれ違い、気持ちを押し付けていただけだった。

 沈黙を破ったのは樹のほうだった。

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