わたしの意地悪な弟
「友達はいるし、彼女には興味がないかな。こうして姉さんと楽しい時間を過ごせるだけで満足だよ」

「シスコン」

「褒めてくれて嬉しいよ」

 わたしの最大限の嫌味でさえ、さらっと流してしまう。

「そろそろ戻ろうか。姉さんを教室まで送らないといけないから」

「送らなくていい」

 樹は少年のような笑みを浮かべると、わたしを手から解放した。

 携帯を確認すると、次の授業が十分後に迫っていた。

 だが、ベンチから立ち上がった時、わたしと樹に複数の細長い影がかかる。

樹の友人たちだろうか。そう思ったのは一人、顔と名前が一致する姿があったためだ。

 男子生徒たちはわたし達に気づいたのか、足を止め、わたしと樹を交互に見つめた。

「お姉さんこんにちは」

 髪の毛をスポーツ刈りにした少年は愛嬌のある笑みを浮かべる。

 彼は樹と中学生時代の友人の木崎俊太だ。

 樹とは仲が良く、彼がわたしにべったりというか、何かとちょっかいをだしているのを知る数少ない人間だ。
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