わたしの意地悪な弟
 もっとも木崎君は樹のそんなところにドン引きするどころか、愛情表現の一つだと発言をし、樹のそんなところを認めているという広い心の持ち主だ。

「久しぶりだね。学校はどう?」

 わたしの下級生に対する問いかけは、他の生徒の言葉に飲み込まれた。

「藤宮のお姉さん? 噂通り可愛いね」

 そういったのは顔が一致しない二人の生徒だ。一人は木崎君と同じくらいで、比較的長身だろう。

もう一人はわたしより少し高いくらいだ。恐らく日和と同じくらいだろう。

 可愛いと言われたことより、わたしは噂のほうが気になった。さっき樹を好きであろう女子生徒が流していた噂だろうか。

 自己紹介しようとしたわたしの背中を樹が叩く。

「姉の藤宮千波だよ。友達と約束があるなら、早く戻ったほうがいいよ」

 彼は適当なことを言うと、わたしの背中を軽く押す。

 樹の友人は残念そうな笑みを浮かべるが、木崎君は苦笑いを浮かべている。

 樹の言葉が嘘だと気付いたのだろう。
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