わたしの意地悪な弟
わたしの優しいけど、やっぱり意地悪な弟
 携帯のアラームが鳴る。わたしは気づきながらも、布団に体を任せたまま身動きしない。

また五分後にアラームが鳴るはずだ。だが、なかなか鳴りやまない。

 わたしはそれを止めようと手を伸ばした。だが、その手が何かに捕まれる。

変に思ったわたしが目を開ける前に、まだ高さの残る、聞き馴染みのある声がわたしの耳をくすぐった。

「千波、そろそろ起きろよ」

 ゆっくりと体を起こしたわたしに、影がかかる。

 目をあけると至近距離に樹の顔があった。

「おはよう」

 その言葉と同時に樹が唇を重ねてきた。

 わたしの動揺が落ち着く前に、樹が唇を離す。

 彼氏彼女になって、お互いの部屋には比較的自由に行き来できるようになったが、今のは完全な不意打ちだ。
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