わたしの意地悪な弟
 わたしも見世物のような状態を持続するつもりはなく、樹の友人から解放され、教室に戻ることにした。

 彼がわたしを追い返したのは、どんな意図があるのかは分からないが、友達にわたしを見られたくなかったのだろうと考えるのが自然だ。

 それなら近寄ってこなければいいと思うが、それでも近寄ってくるのが樹だ。

 彼の気まぐれな行動に振り回されるのを、二年と思うべきか、まだ二年あると思うべきだろうか。わたしは後者だと思っていた。

 樹が自分の学力に見合った高校に行ってくれれば、こんなややこしいことに巻き込まれずに済んだのにと心から思う。

 樹たちから離れ校舎へ戻りかけた時、今度はわたしを呼び止める声が響いた。

 髪の毛をスポーツ刈りにした、長身の男性。クラスメイトの半田君だ。

 樹を陸上部に誘ったクラスメイトでもある。

 一年のときは同じクラスだったのにほとんど話をしたことはなかった。だが、樹つながりで、最近は日常会話をする程度の仲にはなっていた。

「相変わらず仲がいいんだね。君と弟さん」

「仲がいいのか悪いのか」
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