わたしの意地悪な弟
 わたしは大げさに肩をすくめる。

 もっと口を聞かない。罵声ばかり浴びせられるといった分かりやすい仲の悪さであれば、仲が悪いと断言出来るのに、難しさはある。

「一緒に登校しているし、ごはんだって一緒に食べるなら悪くはないんじゃない? 俺は妹と一緒に住んでいるけど滅多に口も利かないからね」

「そうなの? 意外」

 クラスメイトとして彼を知っているが、彼は明るく誰とでも話をするタイプだと思う。

彼の妹を直接は知らないが、そんな彼が家族と親しく話をしているといわれたほうが違和感がない。

「兄弟なんて結構極端だと思うよ。藤宮さんの家は血がつながってないってのもあるのかもしれないけどね。用事があるときだけ話す感じだからな」

 不必要にべたべたせずに、必要な時だけ接する関係。

 ある意味、理想とする兄妹関係かもしれない。

 だが、彼の好意をむげにしない為に、その言葉は伏せておく。
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