わたしの意地悪な弟
「わたしは本当の兄弟みたいになりたいと思っていたんだけどね。少し距離を感じてしまうかな」

「そんなふうに特別に思われている弟さんに、少しだけ嫉妬する」

「嫉妬って」

 半田君は髪の毛をかくと、わずかに頬を赤らめた。

 そのとき、彼の背後に樹が見えた。辺りを見渡しながらやってくる樹の足がわたしと目があった瞬間に止まる。

「そのままの意味だよ」

 わたしはその言葉にドキッとする。

 まるで彼から告白されたようだと感じていたためだ。

 樹の目が見開かれ、彼にもその言葉が聞こえていたのだと理解した。



 放課後、学校を出てからも樹は無言でわたしの前を歩いている。

 迎えに来てからずっとこんな調子だ。

 憎まれ口をたたかれるのはむかつくが、こうして黙られると調子が狂う。

 十分のカウントダウンはあっという間にゼロを告げ、わたし達は家に到着する。

 玄関を開け、さっさと中に入ってしまう。リビングに入った彼の後を追った。
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