わたしの意地悪な弟
 ただ、部屋で時間を潰せるほどの余裕もなかったため、その足で家を出ることにした。

 だが、何か物足りない。その理由はここ一か月ほど一緒にいた樹がいないからだろう。

 彼との時間を望んでいたわけではないが、慣れというものがわたしに寂しさを与えているのだろう。

 今日の放課後はどうするのだろう。

 そう思った時、背後から腕をつかまれた。

 振り返ると、利香が屈託のない笑みを浮かべていたのだ。

「今日は樹君は一緒じゃないの?」

「一緒じゃないよ。用事があるんだって」

「珍しいね。いつも樹君がべったりだったのに」

「そんな気分もあるんじゃない?」

 利香は付き合いの長さもあり、昔から樹がわたしにべったりだと主張する。

「つかみどころがないというか、分かりやすいというか」

「何の話?」

 利香の言葉の意味が分からず、問いかけると、彼女は何でもないと首を横に振る。

 わたしが利香と他愛ない話をしながら学校についた時、体育館に繋がる道に半田君と樹が一緒にいるのが目についたのだ。
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