わたしの意地悪な弟
わたしに命令する弟
 わたしは液晶タブレット端末を、リビングでコーヒーを飲む日和に差し出した。

「日和、映画見に行かない?」

 彼女の視線がタブレットの上を走り、首を横に振る。

「興味ない」 

 その間、約五秒。ほぼ即答状態だ。

「たまにはいいじゃない」

「映画なんて二時間もじっと座って面倒だもん。それなら眠っていたほうが有意義だよ。そもそもネットでネタバレ調べたら、わざわざ行かなくて一石二鳥じゃない。二時間もじっとしておくなんて時間の無駄」

 日和は合理的なのか、冷めているのかわたしに反論の余地を与えない返答をする。

 そうしたストーリーの流れだけではなく、映像や演技など細部を楽しめるものだと思うが、どうやら彼女にとっては違うらしい。

「お前さ、そんなことより勉強したほうがいいんじゃないか? 来年受験だよな。中間テストかなり悪かったらしいと聞いたけど」

 その言葉と共にリビングに入ってきたのは樹だ。

 彼は腕組みをすると、わたしの頭のてっぺんから足の先まで一瞥する。
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