わたしの意地悪な弟
 そのとき、わたしの机に影がかかる。亜子が目を輝かせ、わたしの机に手を伸ばす。

「何の映画いくの?」

 わたしは行く予定になっている映画のタイトルを告げる。すると、彼女は顔の前で手を組む。

「その映画のチケット、ただ券があるんだけど、一緒に行かない? もちろん、樹君の分もあるよ」

 彼女は映画のチケットを差し出す。

 それはわたしが見たいと思っていた映画のチケットだ。

 だが、枚数が八枚ある。

「いいの?」

「いいよ。他にも何人か誘うけど、いい? もちろん利香も来てよ」

「もしかして、岡部君を誘うの?」

 利香の言葉に亜子の頬が赤く染まる。

 岡部君は騒がしいわけではないが、誰とでも卒なく接するタイプだ。

 彼女は岡部君に惚れているのだろうか。

 要は岡部君を誘いたいが二人きりだと気を使うため、複数人を誘おうと思っているのだろう。

 樹も行くならただのほうがいいだろう。

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