わたしの意地悪な弟
「このチケット、まさか亜子が買ったの?」

「違う。知り合いからもらったんだ。だからお金は気にしなくていいの。でも、ほかの男の子も来るけど、いい?」

「別に平気だよね」

 利香の言葉にわたしも頷く。

「樹に聞いてみるね」

 利香は面識があるが、わたしのクラスメイトはほとんど知らないだろう。岡部君とも面識がないはずだ。だから、まず樹に聞いてみようと決めたのだ。

「岡部君だったら、半田君と野間君辺りが来るよね」

 利香が教室内を見渡して、そう言葉を漏らす。

 樹に言いやすくするために誰が来るか具体的に聞いてくれたのだろう。

 半田君が来るのは樹にとってどうなんだろう。

 わたしは何とも言えない気持ちで、その日の帰りがけに聞いてみることにした。

 帰りがけ、樹に映画の話を持ちかける。

 彼は怒る様子もなく意外そうな顔をした。

「映画? 誰と?」

「亜子と利香と……」
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