わたしの意地悪な弟
 わたしからそう望んだのに、樹との約束を自分からダメにしてしまった。

 気にするなといっても難しい話だ。

 何か樹にそれとなく埋め合わせができればいいが、何がいいかは思いつかない。

 あまり時間があくと、こっちも行動を起こしにくなってしまうため、早めに何かしたいと考えていた。

 食べ物をおごったり、樹の好きな場所に連れて行ったりといくつかシュミレーションをしてみるが、これだというものが思いつかない。

 それに樹にお詫びだと言えば、彼は気にしなくていいと返すだろう。

 そう考えると、余計にややこしく感じていた。


 今日行く映画館は、ショッピングセンター内に併設され、いくつもの映画が上映される大型の映画館だ。建物の中に入ると人ごみがわたしを出迎えた。

 わたしは人にぶつからないように気をつかかいながら、待ち合わせ場所となるチケット売り場へと急ぐ。

 エスカレーターを降りると、チケット売り場が視界に入ってくる。そこにはすでに他のメンバーがそろっている。

 五分前についたのにも関わらず、みんな早い。
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