わたしの意地悪な弟
「遅くなってごめんね」

 わたしはみんなの前に来ると、頭を下げた。

「まだ待ち合わせ時間になっていないんだもん。行こうか」

 亜子は持っていたチケットをわたしに渡し、残りのチケットを鞄の中に入れる。

 もうすでにほかのメンバーはチケットを受け取っていた。

 わたし達は映画館の中に入ることにした。

 亜子と利香が歩き出し、わたしが二人の後を追おうとしたとき、半田君と目が合う。

 彼はわずかに頬を赤らめると、その赤味をなぞるように指先を顔で滑らせた。

「いつも制服姿だから変な感じだな」

「そうだね」

 利香や亜子はともかく、男子のほうはみんな私服を始めて見るので変な感じだ。

 半田君はシャツにズボンというシンプルな服装だが、それでも何か違和感はある。

「千波、半田君」

 利香に呼ばれて、わたし達は足が止まっていたのに気付いた。そして、四人のもとに駆け寄った。
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