わたしの意地悪な弟
「かなり強引すぎない?」

 半田君は呆れた顔で利香を見る。

「あれくらいならいいんじゃない? 岡部君も変には思わないでしょう」

 利香はそう言いながら、亜子がさっきまで座っていた席に座り、亜子の席に荷物を置く。

「そうだろうけど。あいつはかなり鈍いからね」

「もともとそうしようって打ち合わせしていたの?」

 わたしは規定事項のように話をする二人の会話に戸惑いを露わに問いかける。

「話す機会を作ってあげてと頼まれたんだよ。岡部が誰を好きかは分からないし、協力はできないけど、あいつは嫌なら嫌だと言えるやつだから、それくらいならってことで」

 半田君の言葉に野間君も頷く。

「全然気づかなかった」

 わたしは今日まで樹のことで頭がいっぱいで、全く周りに目が行き届いていなかった。

 そもそも今日の本当の目的は亜子と岡部君が親しくなることだったのだ。

「わたしが勝手にやったことだからね。あとどうするかは亜子次第だとは思うけど」

 利香がホールの入り口に目を運ぶ。

 二人は飲み物を買って戻ってきて、女子の分は亜子が、男子の分は岡部君がそれぞれ配る。
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