わたしの意地悪な弟
「何かいい感じだね」

「わたしもそう思うよ」

 利香と半田君は顔を見合わせると肩をすくめていた。

「わたしたちはここで。また、学校でね」

 利香はあっさりと二人に別れを告げ、わたしの腕をつかむ。

「用事はいいの?」

 利香の足が止まったのは、わたしたちがさっきまで入っていたお店の前だ。

「買うんでしょう?」

「何でわかったの?」

「さすがに付き合いが長いもの。千波の考えていることは大抵わかるよ。樹君に買おうとしていることもね」

 疑問を疑問で返したわたしの言葉に、彼女はあっさりと返答する。

「利香ってすごいね。何でもお見通しだもん」

「千波っていつも樹君のことばかりだもんね」

「そうなのかな」

 そうじゃないと否定できなかったのは、ここ最近は考えてみると確かにそうだという自覚があったためだ。

 樹が高校生になって、わたしの生活空間に今まで以上に入り込んできてからずっとそうだ。

 わたしが今朝の出来事と、樹に対する複雑な気持ちを利香に話すと、彼女は苦笑いを浮かべる。
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